日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間の活動を経験。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

研修9日目:この地球のどこかで

 記事の長さに差があるのは、時間がうまく作れないのと僕の怠惰が幅を利かせているためとであります。よし短くなっても、みなさまに伝えたいことは凝縮して書いていくつもりです。

 今日ももちろん授業をしっかりこなしましたが、僕にとって一大事だったのは、5日間仲良くしていただいた中央アジアの留学生たちの修了式があったことです。金曜日に交流会で出会ってから、温泉に行ったり、カフェテリアで一緒に食事をしたりと、極めて短い時間ではありましたが、僕にとってはこれ以上ない充実でした。

 

 とはいえ、修了式の話だけ書くわけにもいきませんので、授業の内容を一通り記述しておきます。(修了式は③へ)

 

①英語

 昨日の話では1週ごとに英語の先生(2人いる)が交代するということでしたが、どうやら勘違いで、毎週火曜日の1コマだけ別の先生がゲストとしていらっしゃる、ということでした。もちろんより多くの人と仲良くなるためでもありますが、英語の授業としての効果を言えば、別の人の英語を耳にするよい機会をつくることができます。特にフィリピンの英語は、いわゆる教科書通りの聞き取りやすい英語ではない(すくなくともふつうの英語学習者にとっては)ので、今から耳をスウィッチする練習をしておいたほうがよいわけです。

 ふだん習っている先生は非常に明るい方で、どこがそんなにおかしいのかわからないほどよく笑い、僕らもつられて笑いだしてしまうほどです。そんな先生が「もう1人の先生はもっと面白いわよ。私はstrictだけどね」みたいなことをおっしゃったのは衝撃でした。で、実際に今日初めていらした先生を見て、初っ端からジョークを飛ばしまくるので至極納得した次第です。このコマは自由な会話をする時間となりましたが、フィリピン人の底力を見せつけられたような心持です。

 いつもの先生の授業パートでは、交通機関と道順についてやりました。フィリピンの交通機関と言えばやっぱりジプニーが筆頭です。乗り合いバスと表現されることもありますが、横向きのシートが向かい合わせに設置されていて、乗った人は乗車賃を運転手に手渡しするのです。この時、あまりに遠いと手が届かないので、隣の人にお金をパスする*1というのはおもしろいですよね。

 道案内はよく英会話で取りざたされる項目ですが、改めてちゃんと勉強するとこんなにむつかしいものはありません。つまり目的地に正しく誘導するには、過不足なく情報を与えなければならないわけで、その取捨選択に苦労してしまいました。"Go straight two blocks*2"とか"Go pass the museum"とか、意外と言えないフレーズがあったりして非常に勉強になりました。フィリピンで教えることはないにしろ*3、聞くことというのはままあることと思いますので、ちゃんと覚えておきたいです。

 

②ストレスマネジメント

 海外に行けば必然的にストレスを感じることになると思います。パートナーズでいえば、長期間ひとりで過ごすわけですし、そもそも生活環境や周囲の価値観が大きく異なりますから、へたに塞ぎ込んでしまうと業務どころか健康をも害しかねません。

 それをどのように解消していくかという話だったのですが、いろいろな意見が交錯して面白かったです。僕は完全にインドアな人間なので、PCでなにやら動画を見るとか、海外であればDisney ChannelとかCartoon Network*4で画面に噛り付いたりしますね。日本であればふらりと古本屋に行って解消できそうなものですが、海外ではそういう意味で束縛が強いです。

 他の方には、汗を流すとストレス解消になるという意見もかなりありました。好きなことをするという意味では、食べたいものを食べるとか、Youtubeなんかで日本のTV番組を見るとかいろいろありました。「ふだんしていることをできるだけ続ける」というのは、五郎丸で脚光を浴びたルーティンと同様、心理学的な効果があると思いました。

 

③お別れパーティ

 彼らの修了式に続いて、立食パーティが設けられました。会には学生たちがホームビジットでお世話になった方々もいらしていて、てんやわんやの様相でした。たった2週間の滞在で、しかも僕が知り合ったのは先週の金曜日ですから、あまりにも早いさよならです。

 たくさん写真を撮り、お話をしているうちに歌やダンスが披露される時間がやってきました。日本人って、こういうときに踊れる人は稀じゃないかと思うのですが、中央アジアの方々はみんな踊りが大好きみたいです。音楽がかかりだすと、だれかれ構わず輪の中に引き込み、どんどん陽気な踊りが波及してゆくのです。振り付けも決まっていないようで、みな思い思いに踊っているのはカオスでしたが、ちょっと混ざるだけでかなり楽しかったです。僕も踊りの素養はあまりないですが、それらしく体を動かすだけでも笑顔になれます。

 歌を歌う*5方もありました。何語だかわからないし、まして何を言っているのか皆目見当が付きませんが、とても素晴らしいパフォーマンスでした。なかには日本語の歌を空で歌う方もいたりして、それだけ日本に好感を持ってくれているのだなぁとしみじみ思いました。

 会が終わって、特に仲良くした4人組(日本人とウズベク人の2人ずつ)で海岸へ散歩をしに行きました。海のない国ということで、海に漬かってはしゃぐのがあまりに楽しそうなので、僕も柄にもなく靴下を脱いで参戦してしまいました。砂浜ではなく大理石が敷き詰められた海岸なので、足ツボが非常に痛い。

 この日僕はいくつも嬉しい言葉をかけていただきました。

「広島へ旅行に行った時にも温泉には入りましたが、あなたたち日本人と銭湯へ行った時の方がずっと楽しかったです」

「chihairoさんは、私の日本で初めてできた友達です」

 実際はもっとたどたどしい日本語で、文法的には正しくない言い回しを使っていました。けれども僕は、彼らがこれほどまでに日本を楽しんでくれたことがうれしかったし、何よりこんな素晴らしい友達ができたことが、たまらなく幸せでした。こうした喜びがあるからこそ、僕は海外の人と関わっていきたいと思うし、それを生業にしていきたいと思うのだと再認しました。

 今はFBという便利なツールでkeep in touchすることが容易な時代です。だからこそこの関係を弱めないように交流を続け、いつかウズベキスタンに遊びに行きたい。そう強く願った1日でした。

*1:"Bayad po"(お金です)といって手渡したりするとガイドには書いてありますが、現地の人はなにやら違う言い回しをしているようです。聞き取れません。

*2:blockという単位は、あまり日本人にはなじみのないというか、伝わりにくい表現なのではないかと思っています。というのもアメリカとかイギリスだと、どんなに細い道にも名前がついていてblockが明確に示されますが、必ずしも日本ではそうでもないためです。単に僕の方向音痴がひどいだけかもわかりませんが。

*3:とか言いながら、なぜか僕は海外でものを尋ねられることが多いです。バッキンガム宮殿では「ねえ、これがあの宮殿なの?」と聞かれ、ロンドンのある町では一番近い駅の場所を聞かれ、これもロンドンですが"Are you Brtish?"と確認した上で「イギリスではネイバー(隣人)をどう綴るの?」と聞かれたことまであります(イギリスではneighbour。たまたま知っていたので親切に教えてあげました)。どうみても観光に来た東洋人だと思うのですけどね。

*4:ちなみに各チャンネルで好きなのは、"Phineas and Ferb"と"Family Guy"です。前者はどうにか日本語訳もでており、見ようと思えば手に入りますが、後者はあまり普及していないようで残念です。ネタのきわどさと、ローカルさ(なにせ50年代の音楽をパロディしたりしている)とで日本に浸透しづらいのでしょう。

*5:ふと思ったんですが、これも「頭痛が痛い」みたいな二重表現にあたるんですかね。ほかに「犯罪を犯す」あたりも若干引っかかりますが、コロケーションとしての親和度が極めて高いので、気にしないほうがよいのかもしれません。