日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間の活動を経験。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

虫のいろいろ

 尾崎一雄の短編が名品*1なのはさておき、やはりフィリピンをはじめとする東南アジアでは、どこにでも虫が湧くのに悩まされることが多いです。見るからにぼろい建物ならあきらめもつくのですが、わりに新しい建物でも油断ならないというのがちょっと苦しいところでもあります。

 今の段階で虫などについて思うことを書いていこうと思いますが、さすがに虫の写真は載せませんのでご安心を。唯一遠巻きにヤモリを撮ったものはありますが、まだかわいいものではないでしょうか。

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  まず一番僕が嫌なのはゴキブリです。なにが、と問われるともうそれは生理的嫌悪としか言いようがないのですが、それは全人類に共通した認識ではないかと思います。これはパートナーズの選考面接でも聞かれたことです*2が、ゴキブリだけは絶対に耐えられません。

 こちらのゴキブリは、日本のやつらと比べるとけっこう違います。大きさとか見てくれを言及すると気持ち悪いのでやめますが、「態度」が全然違います。動きがとにかくトロいのです。逆に言うと退治はよりたやすくなりそうなものですが、それにしたって堂々とそこらを闊歩しているあたり、鉄面皮というかなんというか……。現地の人たちがあまり躍起になって駆除しているわけではないというのもあるのでしょうけどね。

 スローだろうとなんだろうと、とにかく出会いたくないので、いくつか対処グッズを購入しました。

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 まずはやはりスプレー。出会ってしまった場合に、サンダルなんかで潰すのもためらわれますので一番必要な武器です。このBaygonはフィリピンで愛されている(?)メーカーで、スプレーだけでもいろいろな種類がありますので、正直どれを買ってよいものかわかりませんでした。どうやらこれは、殺虫と同時に防虫の効果も持っているようなので、大は小を兼ねようという安直な思考でこれにしました。

 一度アリに対して使いましたが、かなり即効性があります。逆に言うと人体への影響も懸念されますけれど、DDTの時代よりはよくなっているでしょう。

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  あとはこれ。前回フィリピンに来たときに発見して感心したアイテムですが、中には2本のチョークが入っています。で、これを玄関先とか虫の出そうなところにガリガリ書いておくと虫を退治できるというのです。幸か不幸か、これを使ったことによってゴキブリが死んでいた、という体験はまだしたことがありませんが、部屋で小さな虫が死んでいるということはよくありますので、あるいは効いているのでしょう。前回も部屋中に書きまくったらゴキブリが出なくなりました。

 あとはブラックキャップ的なアイテムを置けば完璧なのでしょうが、そもそも安くないのと、それを置くことによって却っておびき寄せてしまうおそれがあるので置いていません。

 

 それから案外根が深いのがアリの問題ですね。ゴキブリ他の虫と違って小さいですので、ちょっとでも液ダレを放っておくと瞬時に駆けつけます。とはいえゴキブリよりフォルムは気持ち悪くないですし、水周りであれば流してしまえば済むので、そんなに苦ではありません。自室だけではなく研究室にもわんさかいますが、最近はコーヒーの砂糖壺にたかっていてもあまり気にせず使えるようになりました。衛生的にどうかはあまり考えていませんけど。

 と、ここまで記事を書いた段階で事件が起こりました。この日、きまぐれから夜中の11時に電気髭剃りを持ち出してシェービングに興じようと思ったら、刃の部分にアリが歩いているのを見つけました。それだけでは別段驚かず、ピンと指ではじけば済むと思ったのですが、目が慣れてみればうじゃうじゃとアリが集っているのです。ゾッとして刃を取り外してみますと30匹は超えるであろう数が、駆動部分から現れました。

 本当に幸いだったのは、念のために水洗い可のシェーバーを買っていたことです。アリたちもけっこうしぶとくしがみ付くのですが、強めの水流で一掃することができました。もし僕のように電気髭剃りをお使いの方がいましたら、絶対に水洗いできるものを持って行ったほうがよいと断言しておきます。

 ちなみにですが僕が買ってきたのはこれです。

ブラウン シリーズ3 メンズシェーバー 3040s 3枚刃 お風呂剃り可

ブラウン シリーズ3 メンズシェーバー 3040s 3枚刃 お風呂剃り可

 

 

 ここでさらに怖くなったのは、パソコンへの影響です。自室にも研究室にも生息しているといいましたが、エサの有無にかかわらずどこでも這いまわっていますので、もちろんラップトップ上を歩いていることもあるわけです。で、時としてヤツらはキーボードの中にも入り込んできます。現段階では辛抱強く待ったり、叩いて追い出したりしていますが、うっかり基盤の方まで入られるとショートの危険もあるような気がします。これが壊れたら僕は何もできなくなるので、まさに死活問題と言えます。なんたって甘くないはずの髭剃りに陣取っているくらいです。何が起こるか分かったものではありません。

 アリくらいならかわいいものだと対策を講じていませんでしたが、「アリの巣コロリ」的なアイテムも必要みたいですね。今度買ってこよう。とりいそぎ、先に挙げましたチョークはアリにも有効みたいなので、魔法陣よろしく部屋中に書きまくっています。

 

 東南アジアでは蚊にも注意を払わなくてはなりません。マニラはそこまでではありませんが、田舎の地域では雨季に流行ることが多いようです。

 前回来たときは一切刺されることなく、今回も平気だろうと高をくくっていたのですが、見事自室でやられてしまいました。未だ退治に至っていないので、コンスタントに刺されている日々が続いています。

 無論こちらで蚊除けは買いました。

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OFFという、事前の研修で推奨されたものです。臭いもそんなに強くないので別にいいのですが、たぶん日本のよりも「キツい」ので、やたらの塗るのはためらわれますし、そもそも無精なのであまり使っていません。とはいえどうやら塗っている日は刺されていないようなので、ちゃんと使わないとなぁと思っています。

 

 これは虫ではありませんが、うちの寮にはヤモリも生息しています。数でいえばたぶん虫よりも多いです。

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 どこから入ってきたのかわかりませんが、先日部屋の壁にちっこいのが貼りついているのを見つけました。虫に比べたら全然ましでむしろかわいいくらいですし、もしかしたら虫を食ってくれるかもしれないと思ってそのままにすることとしました。

 しかし、これを見つけた2日後の夜、遅くなったので寝ようと布団を翻したら、小さなヤモリの遺骸が出てきました。大きさから判断するに、写真の個体、つまり2日前に僕が発見したヤツではないかと思います。不自然にくねらせた体はさして痛んでいるとは見えず、うっかりつぶしてしまったとは考えにくいです。もしかしたら、ですが、部屋の各所に書きなぐったゴキブリ除けチョークが効いてしまったのかもしれません。あるいは徹底的に虫を除け、外につながる隙間をふさいだためにエサがなくなって息絶えたのかもわかりません。どちらにしても気の毒なことをしてしまったと思います。ほんとうのところ、こいつとは仲良くやっていきたかったのに。

 

 そんないろいろの命と一緒に、どうやら僕は暮らしています。まだ手放しに快適とは言えないけれども、早いうちに慣れなくてはいけませんね。どうあれこんな暮らし、フィリピンっぽいじゃあありませんか。

*1:「虫のいろいろ」は岩波文庫で読むことができましたが、残念ながら今は絶版で読みにくくなっています。筋書は師匠でもある志賀直哉「城の崎にて」に近いとよく指摘されます。ただ尾崎の作のほうが、希望に満ちているような雰囲気はあるかもわかりません。

*2:第二次選考:面接参照