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日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間派遣予定。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

滞在231日目:節分大会②「露とこたへて」

 恵方巻の後の豆まきセッションですが、正直こっちはそんなにやることがなく、どちらかというと1時間半もたせるようなプランに苦戦した印象です。そもそも教室で豆を撒くわけにいきませんので、会場の問題もけっこう大きかったと言えます。

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 「豆まき」としてやりたいことは、大きく分けて①歳の数だけ豆を食べる、②鬼に向けて豆を撒く、の2点がありました。もちろん、日本でやるときにはどちらにも煎った大豆を使いますが、ちょっと手に入りません。食べられる豆という意味では、ピーナッツを含めて無数に見つけられますが、撒くものと考えると価格的に割に合わないと感じました。

 で、結局のところ、食べる豆と撒く豆とを別々に用意することとしました。

 まず食べる方は、まあなんでもよかったのですが、一番こちらで馴染み深いと思われる「Nagaraya」を持ってきました。ピーナッツがクラッカーで覆われたお菓子で、日本の名前を冠していますが、完全にフィリピンの企業によるものです。

 撒く方について、当初はスープなどにいれるMonggoという豆を使用するつもりでいたのですが、いざ買いに行ったらスーパーに扱いがないという不運に直面しました。代わりにほどほどの豆はないかと売り場を見ましたら、安いものだとRed Beansがありましたのでそれを代用とすることにしました。小豆とはどうやらちょっと違うらしいのですが、赤は魔除けの色ということ*1で、かつては豆まきに使っていたという説もあるとかいうことなので、まあいいところでしょう。

 

 ただ、プレゼンを加味したところで、豆を喰って豆を撒くだけでは90分授業(実質70分くらい)ももちませんので、こちらでも巻きずしをちょっとやることにしました。ただし恵方を向いて食べたりはせず、全体で作った数本をスライスして食べる程度のことです。

 米は使い切ってしまっていましたが、学科のご厚意でお米を炊いていただきましたのでそれで4本ほど作らせることができました。

 

 で、説明ですが、例にもれず動画を多用しました。と言いますのも、豆まきのように動きのあるアクティビティを紹介するときには、やっぱり静止画だと伝わりにくいのです。興味を惹くためのアニメということももちろんですが、実写映像をひっぱってくるのも面白いと思います。

 ここで使ったアニメは『みなみけ ただいま』です。言わずと知れた日常アニメの傑作ですが、これの一エピソードに豆まきをうまく紹介したものがあったので引用させてもらいました*2。ほんとうは「ちびまる子ちゃん」にもっといいエピソードがあったのですが、便宜上『みなみけ』にしました。

 それから実写映像としては、YouTubeで見つけたとある幼稚園のものを編集して使いました。先生扮する鬼が教室に入って来て、ほんとうはそれにむけて豆まきをしなくてはいけないのですが、その恐ろしさに泣いたり逃げ回ったりする園児たちの姿が面白いので採用しました。興味深いのは、この幼稚園で園児たちが投げていたのは丸めた新聞紙だったということです。Wikipediaほかの情報源で、豆だと危ないから新聞紙などを使うことがあるとは知っていましたが、伝統の観点からいくとそれならいっそやらないほうがいいのではないかという気がしてしまいます。僕が幼稚園生のころは煎り豆を撒いていました*3が、いまは食べものを粗末にするなという声も大きいのでしょうか。

 

 なぜ豆なのかという理由も言っておかねばなりませんが、それが「魔滅」の音に通じるからというのもあまり納得できないように思いました。たぶん多く収穫できるとか、他の穀物に比べて安価であるとか、そういう実際的な理由もあるのではないでしょうか。

 「ひいらぎいわし」も由来としては腑に落ちないところです。一般的によく聞く説として、ひいらぎは鬼の目を刺すため、いわしは鬼がその臭いを嫌うため、というのを紹介しましたが、この辺は日本に帰ってからゆっくり研究したいところです。

 

 豆を撒く前に、年の数だけ豆を食べるというのをやってもらいます。といって、実は恵方巻のセッションより人数が少なかったので、用意した豆がだいぶ余る結果になりました。また、Nagarayaはけっこうヘビーなおつまみですので、20個やそこらを食べるのは苦しかったかもしれません。

 

 で、いよいよ豆まきです。教室で撒くと怒られますので、講義棟を出てすぐのところでやることにしました。鬼は僕が請け負い、他のパートナーに持ってきてもらった、豆のおまけについてくるプラスティックの面を装着します。一人では活気に欠けるかと思い、紙皿でもうひとつ作ったものを学生の有志に渡し、鬼役をお願いしました。

 外に出て、なるべく迷惑にならなそうなところを陣取って「鬼はそと、福はうち」とやってもらいます。豆まきはストレス解消のような要素もあると思っていて、従って変に手加減すると白けてしまうのではないかという懸念があったのですが、全くの杞憂でした。容赦ないRed Beansが雨霰と飛んできましたが、これがけっこう痛い。幸いにして、僕も鬼役の学生も眼鏡の上からお面をつけていましたので大丈夫でしたが、顔に当たったら相当なダメージを被りそうです。彼など”Masakit! Mssakit!(いたい!いたい!)”と言いながら職務を全うしていました。

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 ともあれいちおう盛況で終わりましたが、僕の力不足を感じたのは、僕らが豆まきを楽しんでいる間にお手伝いのパートナーが恵方巻の片づけをしてくださっていたことです。やっぱりひとりではなにもできないのだなぁと無力をかみしめた次第です。

 

 

ナガラヤ バーベキュー NAGARAYA BARBECUE 160g
 

*1:身近なところで言うとダルマや鳥居、還暦のちゃんちゃんこが赤いのも同様の理屈でしょう。生気がみなぎっている、という説明だとすれば「赤ちゃん」がいい例ですね。関係ないですが、江戸の中期から刊行され始めた「草双紙」は、初めは年始に買う縁起物でした。そのため、厄病をよける赤い表紙の「赤本」が前期の草双紙として知られています。

*2:いわゆる「日常モノ」で季節行事を扱うときには、大抵「無知なキャラ」と「それを啓蒙するキャラ」とがいますので、その掛け合いをうまく引用するとわかりやすい文化紹介になりえます。

*3:さすがに拾って食べることはなかったと記憶しています。もちろん最近はもったいない精神がはびこっていますし、それに乗じたクレームも頻発する世の中ですから、煎り豆の代わりに、殻ごとの落花生や袋入りの豆をそのまま撒くところも増えているそうです。