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日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間派遣予定。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

滞在224日目:「何チョコですか?」

 世間はバレンタインデーです。僕としてはこれといって思い入れのある日ではなく、かといって漫画でよくあるようにねたむような気持ちも毛頭ありません。ようするに、この日については「市井の人がなにやらにぎわう日」という鳥瞰的な認識を持っているのみなのです。

 それはさておき、今日はあるクラスでバレンタインに関する文化紹介を行いました。有名な話ではありますが、日本のバレンタインデーは他の国の祝い方とだいぶ異なっています。

 

 といって、アメリカとかイギリスでどうやって楽しまれているかは具体的に存じ上げないのですけれども、少なくともフィリピンでは、男性が意中の女性に花束なんかをプレゼントするイベントと認識されているようです。

 一方日本では、ご存知の通り女性が男性に対してプレゼントをする日として認知されています。それもあげるものはチョコレートと相場が決まっていますね。これも考えてみれば妙な話で、聖バレンチヌスとチョコに何か特別な関係があるわけではないんですよね。要するに製菓業界のキャッチ―な宣伝が尾を引いて文化を形成するに至った*1のでしょうが、それを言っては夢もロマンもあったものではありませんから、あえて語りませんでした。

 

 で、面白いのは近年生まれたらしいチョコのヴァリエーションです。「本命チョコ」「義理チョコ」という区分は比較的早くからあったように思いますが、最近では女性友達にあげる「友チョコ」、家族にあげる「ファミチョコ」、自分にあげる「自分チョコ・マイチョコ」、更には男子から女子にあげる「逆チョコ」なんてのまであるそうです。

 なんにしても、贈り物をしあうという現象は好ましいことだと思います。誕生日プレゼントとか年賀状もそうですが、金銭的価値のある物体のやり取りというのにとどまらず、そこには送り相手との交際を続けたいという純粋な気持ちが(基本的には)見られるからです。もっとも、バレンタインの場合は「チョコを受け取る」ことが男子の間で一種のステータスになり、見境なくもらいたがるというのも興味深いものですけれどね。

 

 「3倍返し」ことホワイトデーも欧米にはない文化だそうです。韓国にはどうやらあるみたいで、こちらは更に「ブラックデー」なるモテない人々のためのイベント*2まで用意されています。

 ホワイトの語源については諸説あるのでなあなあにしましたが、これもCapitalisticな理由で、マシュマロ業界の影響を受けているようなのです。いちおう、ホワイトデーのお返しにはマシュマロかキャンディという相場はあるみたいなのですが、それがどれだけ浸透しているのかは寡聞にして知りません。

 「チョコをもらったら返さなくちゃいけないわけだけど、安心してください。何ももらえなかった人は『お返し』の必要がありませんよ!」という説明をしたところ、一部歓喜している学生がいたのは面白かったです。

 個人的な経験としては、本命らしいものを頂いたことはないのですが、高校の時分に何人かから義理チョコをもらいました。さすがにもらったからにはなにか返さなくてはなぁと画策していたところ、3月14日が春休みだと判明し、結局何もしなかったという思い出があります。暦としてはあまりよい配置ではないということですね。

 

 プレゼンの時間が30分とコンパクトなものだったのと、僕がこの行事に明るくないこともあって、説明自体は淡々と進みました。ただしそれではさすがに色彩に欠きますから、アニメをうまく組み込むことにしました。

 バレンタインを扱ったアニメとしてまず思い浮かんだのは、直近で放送されていた『WWW.Working』です。典型的なバレンタインの描写、とまでは言えませんが、女子→男子にチョコを渡すというさまを面白く理解できる資料だと思います。

 で、本当は「学校でそわそわしている男子」とか「下駄箱を開けたらチョコがザラザラでてくるイケメン」とかいったベタなお約束も見せたかったのですが、どうしても具体的な作品が思い浮かばず、この件はなしにしました。

 代わりにホワイトデーの説明として、少し古いですが『あっちこっち』の最終話を使いました。いわゆる恋愛漫画のような描写こそありませんが、うまく切り取れば高校生がどんな気持ちでホワイトデーを迎える(べき)かを示すことができる作品です。本作ではバレンタインが2度来ていますので、そちらも使おうと思えば大いに使えます。

 もちろん英語字幕付きで理解できるようにはしましたけれど、想像以上にウケがよかったのは幸いでした。いわゆる「日常もの(Slice of Life)」って、日本の文脈がないと伝わりにくいところもありそうですが、杞憂だったようですね。逆に言うと「日常もの」は日本の文化に則して描かれているわけですから、その文化の一端を伝える教材としてはもってこいなのかもしれません。

 

 実は、この日は先生もアニメを持ってきていまして、僕の発表の後にはそれを少し見て終わりとなりました。作品は有名な『君に届け』で、フィリピンでもかなり知られているように認識しています。しかし、そうですね。少女漫画が原作のアニメならバレンタインの描写も多いわけですよね。思い至りませんでした。

 

 帰り際、女子学生の1人がスニッカーズをくれました。「これをあげますから、そう気を落とさないで」ということでした。「義理チョコ?」と日本語で聞きますと、「手作りだと想像しながら食べて」と言われました。

 

*1:日本チョコレート・ココア協会のサイトによれば、昭和30年代に始まった商戦が、50年初頭あたりで盛り上がっていったということみたいです。古本仲間に聞いた話では、45年前にチョコをもらったが当時は意味が分からなかったということですので、この説はまあまあ正しいのでしょう。

*2:4月14日に独り身の人が黒い服に身をまとって、真っ黒い麺を食べるとのことです。昔「世界まる見え!テレビ特捜部」という番組で知った記憶があります。どうやら韓国には、毎月14日には何かしらの色があてられているようでもありました。