日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間の活動を経験。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

滞在202日目:カガヤンひとり旅④「去り際もおいしく」

 早くもCDOでの休暇(?)は最終日となり、この日はCDOのパートナーズが教えている専門学校にお邪魔することにしました。

 「教えている」なんて軽く書きましたが、実はけっこうすごいことで、これはなんと彼女が自分で見つけた活動場所なのです。元来CDOで「やるべき」活動は先日の大学においてだけでして、その大学も週1度しか日本語のクラスがないので、派遣の初めのころはかなり暇だったということです。そこで彼女は自らいろいろな学校にアプローチをかけ、小学校や今回の専門学校でも活動することができるようになったということで、その積極性は端倪すべからざるものだと思います。逆に言えば、それができる彼女だからCDOに派遣されたのであって、僕などCDOに行っていたら、海外にいながらにしてニートになっていたこと請け合いです。

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 閑話休題

 この学校というのは、ホテル勤務を初めとする、ある種の専門職の訓練をするところらしく、日本語の授業はその一環で組み込まれているそうです。つまりホテルで働くには、それなりに日本語ができたほうがよいわけですが、すでにそこそこ大人というのもありますし、UPでやっているような細かいカリキュラムも導入は難しいでしょう*1

 

 まずは自己紹介から始め、前回の宿題の答え合わせをしました。

 簡単なひらがなのスペリングのものでしたが、けっこう苦戦を強いられている様子でした。ハンドアウトは誰が作ったものか確認しそびれてしまいましたけれども、どうやらパートナーが作ったものではないらしく、ひらがななのに「Nōto(のーと)」を書かせる問題があったりして、ちょっと説明しづらさがありました。長音は基本的にカタカナに属すると認識しているのですが、どうなんでしょう。

 

 で、いつものふろしきです。

 今回ちょっと難しかったのは、ふろしきもさることながら、包むべきものを揃えている方が少なかったことでした。ある程度まででしたら貸し出す分もありましたが、たとえばボトル2本の包み方となると、むろん全員分の本数は用意できません。仕方なしに「やりたい人」のボランティアを募ってみたり、周りでシェアさせたりしてどうにか形にはなりました。

 逆に、今まで以上にきちんと時間をとって教えたのは、「真結び」のほどき方です。真結びは頑丈な結び目である一方、あるパーツを引けば簡単に解くことができるのです。これが真結びの強みであり、ぶっちゃけこれこそが継承すべき文化だと思うのです*2が、殊ほどき方に至っては全体に説明するのがかなり難しく、まして英語ということですと、右と左という言い方しかできないので大変です。ですからこれまではなんとなく説明を飛ばす傾向にあったのですが、思い切って取り上げてみますと、どうやらみんな理解してできていたようでありました。

 この日は、学生以外に先生とイタリア人留学生ともクラスにいたのですが、そのお二方にもお楽しみいただけたのは幸いでした。これからホテルで務めるうえでもふろしきは使えるかもしれませんし、先生が言っていたのは「いままでワインとかを人にあげる時には紙袋とかにいれていたけど、こっちのほうがキレイね」という点で、やはり大人の方が使う場面を想像しやすいというのは確かなようです。

 

 終わって、もう一つの日本語クラスを見学させていただきました。これは昨日お邪魔したお宅のおじさんが教えているクラスで、ちょうど数字(値段)の言い方を勉強している所でした。見学だけのつもりで教室に入ったのですが、どうにか僕を活かしてくれようとなさったようで、語彙リストの音読を頼まれました。けっこう長いリストで、ようはネイティブの発音を聞かせようという話ですが、実はUPでもこういうことってあまりやっていません。UPでは『げんき』を使っているためCDという確実な音源があるからですね。

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 単語リストと言っても、全部覚えてテストで問われるといったたぐいのものではなく、辞書みたいな使い方を想定しているようでありました。「領事館」なんて、ローマ字で書かれているものですから、最初なんのことかわからないままに発音してしまったくらいです。

 気づいたところとしては、表において日本語もローマ字で示されているため、例えば「観光」が”kankoo”という表記になっていました。で、何も言わずに発音させてみますと、彼らは英語読みで「カンクー」と言ってしまうのです。日本語のローマ字表記は、特に長音について難しいなと感じますが、音に準拠するにしてもāīūēōと書いた方が確実な気もします。

 

 

 授業が終わり、この日もおいしいフィリピン料理を頂きました。魚も肉も、なんでもおいしい印象は最後まで変わりませんでした。

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 明日のフライトは朝早いので、実質CDOでの活動はこれでおしまい。短いながら大変充実していたのは、ここで八面六臂の活躍を見せているパートナーのお蔭と有難く感じています。

 

新・子どもたちの言語獲得

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子どもはことばをからだで覚える―メロディから意味の世界へ (中公新書)

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決定版 ひもとロープの結び方 便利手帳

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*1:一般に語学習得は若いほうがいいと言われますが、脳の働きがどうとかいう以前に、気力の減退によるところが大きいと思います。

*2:結び方ということでいうと、中学くらいのころにヒモ結びを少しい勉強していたことがあります。船乗りとかボーイスカウトの知識ですが、それこそボトル2本のゆわき方とか「もやい結び」という万能の結び方など、未だに活用できるスキルでした。ちょっとずれますけど、僕はチョウ結びが縦結びになっているのにたまらなくイライラしてしまいます。幼少期に母から叩き込まれたのと、剣道の防具や道着に必要だったのとで、頭の上でも背中でも正確に結ぶことができるようになりましたが、靴紐程度ということならみんなできたほうがいいのでは、と思います。