日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間の活動を経験。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

研修2日目:針の筵とならんや

 さてさて、2日目になってもまだ熟睡に至らず、早めに目が覚めてしまうのはどうにかしたいところ。

 本日は外国語のクラスの1コマ目ということで、「プレイスメントテスト」が実施されました。昨日のオリエンテーションで通知されて、メンバー全員が戦々兢々たる夜を過ごしたことと思います。

 フィリピン派遣は英語、ベトナム派遣はベトナム語の講義があるわけですから、当然それぞれの言語のテストを受けるわけです。僕はそんなに英語がうまいという自負を持っているわけではありませんが、これまでにそこそこ海外を経験してきたという経歴が、ある種のプレッシャーとなって肩にのしかかっているのです。

 「よい点をとらなくては!」

 たかだかクラス分けに虚勢を見せる必要はないと知りながらも、しかし自分はかくありたいという理想が、はるか遠くから霞越しの手招きをしているように感じられてしまいます。

 

①プレイスメントテスト

 というわけで朝一からテストですが、テストは大きく分けて「Oral Interview」と「Writing / Listening Test」の二部構成でした。人数と時間の関係上、口頭試験が先の人と筆記が先の人とがありましたが、僕は面接を先に行いました。

 面接は先生2人(お二方ともフィリピン人)に対してこちらは単独で乗り込みます。いちおう面接が始まる前にYoutubeで英会話を聞きこむことで耳を馴らし*1、戸を叩きました。

 定石ですけれども、はじめは自己紹介。名前と出身地、家族構成と趣味について語りました。その後で個別の質問に移っていき、「英語は何年勉強した?」「行ったことある国は?」「家族との関係について教えて」「出身の市を紹介して」と矢継ぎ早にされる質問を、訥々と答えていきました。

 「フィリピンに行ったことがある」と言ったものですから「ではタガログ語はできるの?」と言われ、「いくつかの表現を知っている程度です」と思いつくものを例示しました。"Salamat po*2" "Magandang umaga*3" "Ako si ~*4" まではまあよくある挨拶ですけど、偶然友人に教わって知っていた"CR lang ako*5"というフレーズは、面接官の笑いを誘うことができました。一応「grammaticalですか?」と聞いてみたら「それはスラングね。友達との間で話すのにはいいけど」とお教えいただきました。

 それが終わって次は筆記試験。ReadingではなくてあくまでWritingと言われていたので、てっきり作文が必要なのかと思ったらそんなことはなく、TOEICとか英検と同様のマークシートでした。Listeningもありましたが、「対話を聞いて合うものを選べ」とか「次の広告を見て適当な文を選べ」といったド定番の出題。ただちょっと面白かったのは、センター試験のように「これしかない!」という答えではなく、ある程度常識的に考えたらどうか、という判断が必要とうかがえたことです。やっぱりセンター試験は公平性や客観性を出そうとして、却って問題が簡単になってしまっていると考えました。

 ベトナム語の皆さんはボロボロだったらしいですが、そもそも未習の言語なのですから、恥じることはないし、伸びしろを存分に感じることのできる稀有な機会とうらやましく思います。英語のクラスでは、タガログ語の話も週1回ほどしてくれるそうなので楽しみです。

 

②海外での日本語教育について

 今後の講義でも、現地の教育状況や日本語の教授のされ方は常に意識しなければなりません。自分たちが日本人であることを現地でどう活かしていくかを考えることが、日本語パートナーズとしての任務の質を決めるのでしょう。

 問題提起はいくつかされましたが、だいたい以下のような感じです。

(a)国内の日本語学校と海外の日本語学校との違い

(b)現地の先生とネイティブの先生との違い

(c)パートナーズは授業中にどんな役割を持つのがよいか

それぞれ興味深いですが、一番わかりやすくて簡単な言い方をすると、日本語話者としていく我々は、現地では「よいサンプル」となるべきだということです。

 すなわち、海外では教室を一歩出てしまえば日本語を話す機会はほとんどゼロ。もっといえば教室であっても、現地の先生はネイティブではないので正確な発音など知る由もありません。そこに派遣される我々は、生の日本語を話す存在として生徒を楽しませ、日本語についてのさらなる興味・関心を集めることが任務となると思います。

 果たす役割について、いくつかのビデオを見ました。いずれも過去のパートナーズの記録ですが、見習うべきよい実践も多分に含まれていました。ともかくも日本語を楽しんでもらおうとする魅力を身につけることが、なによりも先決かと思われました。

 

③予防接種

 午後はパートナーズの要項が改めて説明されたのち、予防接種を受ける場が設けられました。事前に申し込んだものですが、ワクチンの種類は実に6種類。かなりの額になるわけでもありますが、A型B型肝炎や腸チフス、破傷風日本脳炎狂犬病*6と、リスクを考えれば非常に恐ろしいものばかりです。

 で、僕はてっきり3種混合とか5種混合みたいに、何本かまとめた液をぶち込むものと思っていたのですが、なんと驚くことに1針1ワクチンでした。実を言うと僕は注射が大嫌いで(好きな人なんていませんけど)、幼少のころには診察室から走って逃げだしたところを医師に取り押さえられたことのある前科者なのです。あまりに嫌で「痛くないですか?」と聞いたら「みんな受けてるから大丈夫ですよ」と言われました。イヤそういう問題では……。

 最終的に、両腕を握力の限り抓り絞ることで痛みを緩和(?)して、どうにか涙は流さずにすみました。診察台を降りる時に、抓った跡を看護師さんに見られ、「ねえちょっと見てこれ、そんなに痛かったですか?」と笑われました*7

 さらに恐ろしいのは、ワクチンには2-3回追加摂取してはじめて効果を発揮するものも多く、今回の場合は3種について、2週間後に再接種をしなくてはならないことです……。

 こうも刺激を被ったのだから、研修自体は「針の筵」とならないことを祈るばかりです。

 

*1:英語という大きな括りに限らず、例えば独特な訛りのある人の英語を聞くときに、耳が温まってくるにつれて聞き取れるようになる、というような過程は誰しもあると思います。

*2:ありがとう

*3:おはようございます

*4:私は~です

*5:僕ちょっとトイレ

*6:事前にもらった資料によると「発症すれば致死率100%」とのこと。現代医学の限界を突き付けられる思いです。

*7:いままでの経験上、抓った跡の方が消えないし、痛みも続くのですけどね。