思い出す事など③
カガヤンデオロ(CDO)へ行った時のことです。
記事としては滞在199日目:カガヤンひとり旅①あたりからご参照いただけるとありがたいですが、パートナーの仕事としてというよりは、どちらかというとバカンスめあての遠征でした。まあ結果としてはCDOの2校で授業を手伝うことができたので、活動と言って後ろめたいところはありません。先の記事にも書きましたように、僕にはとりたてて得意とする「持ちネタ」があるわけではなかったので、比較的準備も容易で楽しめる「ふろしき」をテーマに選んだ次第です。
CDOのパートナー派遣先で日本語を教えていらっしゃる先生は、マニラ着後研修でお世話になった方で、その後一切お会いしていないにも関わらず、僕のことを気にかけてくださっていると聞き及んでいました。日本で学位をお取りになった先生ということもあって日本語もまずまず流暢ですし、教育についての考えも深いのが印象的でした。
この大学でふろしきを紹介した日は、CDO周辺で記録的な洪水があった1週間後くらいだったと思います。そのこともあってかクラスの集まりはそんなに良いとは言えず、まあ小ぢんまりとした感じでやっていこうと取り組みました。
出だしはもちろん自己紹介です。実は大学院のクラスでしたが、あまり体系的な授業を実施できていなかったために、あまり日本語が話せる学生たちではないとのことでした。それでも、せっかくですから簡単なフレーズを聞かせたほうがよかろうということで、「はじめまして」に始まる一連のお決まりを披露しました。
1月ということもあり、学生たちの表情を見ればどの程度僕の日本語が通じているのかはわかるようになりつつありましたので、様子を伺い、必要に応じて英語を補って話を進めました。
ふろしき講座の内容については過去記事をお読みいただければと思いますが、終わってからCDOのパートナーに聞いたところ、先の先生からこそっとダメ出しがあったとのことでした。聞けば、「chihariroさん、自己紹介を『よろしくお願いします』で結ばなかったわね」とのことです。殊初学者に学習言語で接する際には、基本に忠実に、愚直なまでに型通りな話し方が望ましいわけですが、僕もまだまだ未熟だと感じました。それでも、文化体験はお楽しみいただけたようですし、僕の話をお褒めくださったのは嬉しかったです。
これは書くべきではないのかもしれませんが、この実に素敵な先生は、僕たちが帰国する直前に鬼籍に入られました。深更、CDOのパートナーから連絡が入り、涙が溢れて止まりませんでした。もっとお話を聞きたかったし、僅かながらお力添えできることがもっとあったのではないか、と会ったばかりの若造でも後悔に震えました。
心よりの感謝とともに、ご冥福をお祈り申し上げます。