日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間の活動を経験。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

思い出す事など①

 さすがに9ヶ月も滞在していると語るべきエピソードは無尽蔵にあるわけですが、何か話してくれと言われるとパッと出てこず、答えに窮することが多いです。とはいっても、日常ふとしたときに思い出すそうしたひと時を、ほかの下らない思い付きと同じように無碍に扱うのももったいないので、ぽつぽつ書き溜めておこうかと思います。

 

 ようよう日本も暑くなってきましたが、いうまでもなくフィリピンは年中「夏」です。そうした常夏の環境にあって、僕はろくすっぽ散髪をせずに過ごしていました。この顛末は滞在237日目:断髪式にも書きましたが、全盛期にはアフロと形容されるような頭になっていたわけです。いま思い返せばいいシンボルになっていたようにも思いますが、ともかく言語学科ではしばし髪型イジリが話題に上るのでした。

 

 以下は歴史学の先生A、言語学の先生Bとの会話です。

 

A「その頭、暑くないの?」

僕「暑いですが、切るのが面倒なので……」

A「フィリピンでは、子供のときに髪を短くしておくのが普通なのよ」

僕「どうしてですか」

A「Liceのせいよ。――Liceは日本語でなんていうの?」

僕「シラミ、です*1

A「そう、シラミ(以後先生はShiramiと発音した)が多いからなの。あなたもそうでしょ?」

B「そうですね。子供のころは短かったです」

 

僕「で、シラミがいると痒いんですか」

B「うん。実はシラミ専用の櫛があって、それで漉き取るとたくさんとれるんだ。で、それを払い落としてからボトルかなんかを転がしてこう、プチプチっと一網打尽に……」

僕「うひゃあ」

 

A「というのもね、ほらジプニーに乗ると隣の人とすごく密着するじゃない。それでシラミが頭から頭にうつっていくわけね」

B「chihariroもそのうちシラミをもらってくるんじゃない?」

僕「やめてくださいよ……」

A「最終的にはFree passportをシラミに贈呈することになるかもしれないわね」

 

 僕も含めてみんな大笑いでしたが、胸中気が気ではありませんでした。幸い、シラミを経験することなく今日に至っています。

*1:Liceという英単語の知識は、ここで初めて役立ちました。食材の名前や動物の名前は敷衍の仕様がありませんから、できるだけ覚えておいたほうがいいということでしょう。