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日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間派遣予定。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

滞在231日目:節分大会①「北北西に寿司を向けよ」

IN THE PHILIPPINES 授業アシスタント 日本の話

 UPの言語学科では、僕のために大きな文化紹介の枠をご用意いただいています。これまでにやったところで言いますと、「かるた」「書道」がそれに当たります。本当は月イチくらいで実施したいところですが、どうにも暦や予定の関係でこの程度しかできず残念です。

 で、この日はちょっと遅めの「節分」です。枠を2つ(3時間)頂きましたので、前半は恵方巻を、後半は豆まきを楽しむことにしました。

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 最初の枠は恵方巻ですが、一番困ったのは材料の調達でした。学科のイベントとしてやらせてもらいましたので、Open to the publicの形式をとっており、来る人数があらかじめ分からなかったのです。該当時間の日本語クラスの学生は来ますからその分の30人くらいは読めましたが、それ以上はよくわからないままでした。

 具材は別にいくら買っておいても問題ありませんが、米ばかりはどうにもなりません。そもそも必要量がわからない上、30人分にしても炊くのは容易じゃありません。ましてうちには炊飯器がありませんから、炊くにしても学科にある小さな炊飯器しかあてにはできなかったのです。

 こういうとき、他のパートナーズは初めから米を持参してもらう方法をとったりしていましたが、全員がもってくる保証がないのも怖いですし、やはり日本米でやりたいという考えもありました。

 

 で、結局は学科の先生が経営している韓国料理のお店にお願いして、4kg分の炊いたご飯を届けてもらいました。Kimbap用のものですが、フィリピンでふつうに使われているものよりは水分が多いので巻物には適しています。

 また具材については、まあ基本的なところとして、きゅうり、コーンツナ缶、カニカマ、キューピーマヨネーズを用意しました。他のパートナーに聞いたところ、現地のマヨネーズよりもキューピーの方がおいしいと人気があるそうです。

 後任のために申しあげておきますと、その他必要な海苔や巻き簾はマニラでも比較的容易に手に入ります。田舎の方だとまた事情は異なりますが、ダイソーに行けば日本語でラベルが書かれたグッズも多く見られますので、特別日本から持ってこなくてはいけないものはないように感じています。

 

 このセッションに集まったのは、最終的におおよそ40人ばかりでした。

 もちろんまずは概要の説明。恵方巻はどんな習慣なのか、どんな巻物か、どうやって作るのかなどを、スライドで説明していきます。

 最近僕の意識として、ふだんの文化紹介でも大いにアニメを活かしたいという気持ちがあるのですが、ここではみんなお馴染みの『ドラえもん』より「ウルトラ恵方巻」というエピソードを持ってきました。聞いたことのない道具ですし、おそらく近年の作家が安直に考えたものだと思います*1が、「恵方を向いて食べきれば、その間に願ったことが叶う」というコンセプトは恵方巻の伝統をうまくなぞっています。

 それから作り方については、YouTubeの動画を引用しつつも、いちおう僕がデモを見せました。本当は、この日お手伝いに来てくれていたパートナーズにお願いしようかと思っていたのですが、「自分ができないのに説明するのはどうなのよ」ということで挑戦しました。結果、あんまりいいお手本ではありませんでしたが、それでも巻物にはなりましたので、誰にでもできるものなのだという証左は見せられたのではないでしょうか。

 

 40人という大所帯ですので、巻物は2人で1本としてもらいます。といいますのも、用意した海苔は20cm四方でしたので、それを丸々食べきろうとするとかなり苦しいことになるわけです。ですから、まあ材料の節制もかねてひとり10cmの割り当てとしました。

 ところで、告知の段階で「巻きたい具があったら持ってきてもいいよ」とアナウンスしていましたが、今回はマンゴーやきゅうりが見られました。実を言うと変わった具材も期待していた*2のですが、無難な仕上がりなのでそれはそれという感じですかね。

 

 で、もちろん食べるのは全員一斉にです。今年の恵方である北北西*3を向き、僕の合図で40人が黙々と寿司を食べ始めます。実は、この企画を練っている段階から、僕はこの光景が見たくて仕方なかったのです。ふだん賑やかに食事をするフィリピン人が日本文化に触れ、黙々と、又大人数で寿司を頬張る姿というのを見たいがために発案したと言っても過言ではありません。結果として予想を裏切らず、5分ばかり異様な雰囲気に包まれましたが、この「雰囲気の再現」はカルタのときも感じたように、文化体験において一番重要なところだと思います。

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 ちょっと残念というか寂しかったのは、黙々と食べるがゆえにクラスのテンションとしては落ち着いてしまったことです。もちろん食べ物の実践ですから、欲しい反応は「おいしい」なわけですけど、丸かぶりの後で味を尋ねても元気な返答は返ってきませんでした。単純に僕が盛り上げ下手ということもありますが、確かに5分間も黙って食べたあとにテンションを上げ戻すというのも難しい話ですね。

 

 後から聞いた話では、余った米(ほんとうは余らせたかったのですが)を使った20cmの寿司を、一斉のタイミングで食べきった猛者もいたということです。水の用意もないのによくやるなぁと思ったことでした。

 

*1:ドラえもんの資料としては『ドラえもんひみつ道具大事典』という名著がありますが、あれに登場するのはすべて原作で使われているのでしょうか。F先生の設定自体、甘かったり完全上位互換があったりはしますが、ネーミングばかりはこだわってほしいなぁと思ったりもします。

*2:前任のパートナーがいたときには、ハンバーガーやアイスクリームを持ち込んだ強者もいたということです。

*3:正確には、中国の方角区分と西洋のものとが異なるため「北北西やや右」だそうです。学生から「恵方は誰が決めるのか」と聞かれましたが、調べてみると選択肢は4つしかないようですね。