日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間の活動を経験。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

滞在186日目:フィリピン映画を楽しむ

 あくまで一般論でしょうが、フィリピン人はラブロマンスの映画を好むというのを聞いたことがあります。日本人からすると、下手したらベタすぎてみていられないような映画ということなのかもしれませんが、これまでに機会がなくて観てきませんでした。

 で、このたび友人の勧めもあって、”Saving Sally”というフィリピン映画を観ることに。いちおう全編英語ということでしたので、まあどうにか分かるだろうと、ショッピングモールでフィリピンの友人と近郊の日本語パートナー1名と待ち合せました。

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 ところで僕はいわゆる映画好きではありません。むしろ名作とか古典と呼ばれる作品で観ていないものも多く、自分の不勉強が情けないくらいなのです。別に興味がないわけではなくて、どちらかというと観たい気持ちもあるのですが、しかしなかなか機会が取れずにきました。

 大学時代、映画のDVDやVHSを無料で見られる施設を利用した時期もありましたが、王道から逸れたものを観る傾向が強かったです。例えば『フリークス*1』『巨人ゴーレム*2』『足ながおじさん*3』『2001年宇宙の旅*4』『レインマン*5』というように、ジャンルも固定しませんでした。映画マニヤを気取ろうとは思いませんが、もう少しいろんな作品を観てから「大人」になりたいものです。

 

 それはともかく、今回観た”Saving Sally”は、フィリピンらしくラブストーリーです。

 主人公マーティは漫画家を夢見る冴えない男の子。大人しい彼は学校でいじめられたりしても反抗できずにいたのですが、快活で発明好きな女子学生サリーの助けによって、その悩みが解消します。彼女の両親は非常に厳しく、いっしょに遊べる時間は制限されていましたが、その中でもマーティはサリーと過ごす時間を楽しみ、次第に彼女に恋心を抱くようになりました。ところがある日、彼女から彼氏がいることを告げられ、マーティはひどく落胆します。それでもなお自分の気持ちを打ち明けることができないマーティは、苦悩しながらもサリーとその彼氏との中を取り持ってしまい……。

 というストーリーです。極めてありがちというか、これだけ読むと陳腐な三文映画にしかなり得ないかもしれません。

 

 しかし、この映画の特徴はそのビジュアルにあります。全編を通して、実写とアニメーションとが織り雑ぜられており、ファンタジー色が強くなっています。これはマーティの視点に依るのですが、彼にはどうやら自分にとって関わりの薄い人間たちがモンスターに見えているらしいのです。それに加えて、背景や道を走るジプニーなどもアニメーションの割合が高く、まるで仕掛け絵本をみているようなファンシーさに溢れています。

 セットとかロケーションの問題もあっての演出かもしれませんが、それでも単純なストーリーに華々しさを与えているという意味ではよい効果だと思います。

 もちろんオチについての言及はしませんけれど、ちょっと急転直下な感はあります。けれども、やはり予定調和的といいますか、落ち着くべき様に落ち着いていますので「納得いかない」というわけでもないので、まあいいかなという感じです。とかく画の賑やかさが楽しい作品でしたので、一見の価値はあるかと思います。

 

 トレイラーがYouTubeにあったのでよければどうぞ。

www.youtube.com

*1:いわゆる見世物小屋の怪奇譚です。ストーリーもさることながら、実際に見世物として働いていた方々が出演しているという特徴から非常に有名な作品です。障害を持つからという理由での差別は論外ですが、周りだけがとやかく言って彼らの働く場としての見世物小屋が消滅したのは残念でもあります。

*2:何度かリメイクもありますが、最初のサイレント版です。『大魔神』のモデルとなった作品だそうで、怪物映画としても楽しめますが、きちんと人間の心象も描かれているのが興味深いです。

*3:ミュージカル映画で、「おじさん」役はフレッド・アステアです。彼のことは一切知らなかったのですが、この映画を観て魅力に痺れました。彼の全盛期は過ぎていたようですが、ダンスがめちゃくちゃカッコいいのです。映画自体も、大道具など面白く構成されていますが、ジルーシャ(本作ではジュリー)がフランス人という設定は必要なのかちょっと疑問でした。余談ですが、この作品の試聴を申請したら、レーザーディスクを渡されて戸惑いました。実はそれまで見たことがなかったのです。

*4:SF映画の金字塔というので観ましたが、はっきり言って退屈で仕方ありませんでした。確かに特殊効果の妙は目を見張るものがあります。あの時代における技術としても素晴らしいですし、あの宇宙の不気味な静寂は、いまのCGでは却って表現できないようにも思います。が、いかんせんストーリーが分かりづら過ぎます。HALの暴走の件は面白く観られましたけど、最終場面など完全に置いてきぼりでした。原作はわかりやすいということですので、いつか挑戦したいところ。

*5:サヴァン症候群を持つ、いわゆるGiftedをテーマとしたヒューマンドラマの傑作です。やはりダスティン・ホフマンの名演を褒めずにはいられません。これのモデルとなったキム・ピークについて昔から興味があったのですが、残念なことに2009年に亡くなっています。