滞在126日目:「そうですね」「そうですか」
僕はそんなに英語がうまい方でもありませんが、かといって全くできないわけでもありませんで、「それなり」に会話をこなすことはできている自負があります。つまり自分のもっている情報を相手に伝え、反対に相手の言及を受け取ることはどうにかできているわけです。ところが、言語を通じたコミュニケーションは単に情報伝達のみならず、社会言語学的な側面も重要になってきます。
英語における課題はまだたくさんありますが、中でも「あいづち」をどうしたらよいかは非常に難しく思っています。「へえ」「なるほど」「そうですね」など、確かに辞書を引けば言い回しは羅列されていますが、どうにも自然に口から出てこないというのが現状です。
今日は日本語のあいづちについて、30分ばかりの発表をしました。
といっても全部扱おうとしたらキリがありませんので、よく使う且つ紛らわしいものに集中してプレゼンを構築しました。
扱うのは「そうですね」「そうですか」の2点。文字で書くとこれだけですが、「そうですか」について、語尾を上げるか下げるかで大きく意味が異なるのはネイティブなら容易に理解できることでしょう。
まず紹介したのは「そうですね」です。
特段説明するまでもありませんが、直前に来る相手の発言に同意を示す表現です。例として示したのは以下のような文。
A「今日はあついですね」
B「そうですね」
A「Xさんはかっこいいですね」
B「そうですね」
この場合は、前文に「ね」がつくことが多いと思います。つまり相手が「ね」によって同意を求めるのに応じる形で「そうですね」が使われているわけです。
ただ、「そうですね」はフィラー*1のような使い方もされます。「好きなアニメは?」と聞かれて「そうですね、ワンピースとNARUTOと……」というタイプがそれです。アクセントは同じですけど、ちょっと長めに発音しているかもしれませんね。
もう少し難しいのが「そうですか(下降)」です。これは前文が話者にとって新しい情報であったときに、それを把握したことを表すというような説明になるでしょうか。例えば以下のようなやり取りが挙げられます。
A「どこの学生ですか」
B「フィリピン大学の学生です」
A「そうですか」
A「これはいくらですか」
B「1500円です」
A「そうですか」
上記において、Bの示す情報はAにとって新しいものですので、それが分かったという意味で発せられる言葉と言えるでしょう。似た意味を持つ言葉に「なるほど」がありますが、こちらはもう少し論理的背景を理解したときに使われる感じがします。
で、「そうですか(上昇)」は、相手の言及に賛同しかねる場合に使われます。これは割合文字通りの意味と言えそうで、Question Markerとしての「か」がそのまま生きています*2。例はこんな感じ。
A「ラーメンが500ペソ! 高いですね」
B「そうですか(上昇)。安いですよ」
A「Bさんはかっこいいですね」
B「そうですか(上昇)」
語末にクエスチョンマークを置いてもアクセントとしての上昇は表現できます*3が、少なくとも教科書『げんき』では使われていない方法ですので準拠しました。
表現としてかなり似ていますし、上昇下降なんていう要素まで取り入れますと相当区別が難しいようです。とはいえ、これらを混同しますと会話としてかなり不自然になるのも事実です。逆に言えば、この3つを習得することでだいぶ自然な会話を演出することができるということでもあります。ちょうど30分の短いレクチャーでしたので完全に理解してもらえたとは思いませんが、それでもなにかの刺激になっていれば幸いです。
他の「そうですよ」「そうですよね」なんかも違う意味として使われますので、説明は無限に必要というわけです。
そういえば、ひとつ質問を受けました。「NARUTOの『だってばよ』はなにか」というものです。ふだんの会話ではまず使わないけど、意味としては強調だと答えておきました。