滞在70日目:お土産をうまくばら撒く
今日は初級のクラスでバザーが催されました。小物を中心に売りたいものを持ってきてくれとのお達しが事前にあり、学生たちは文房具から手作りのグッズから色々なものを持ち寄りました。
初めはてっきりボランティア的な活動なのかと思ったら、これは日本語の練習の一環なのでした。授業で「いくらですか」とか「これはなんですか」をやったばかりなので、それを実際の活動を通じて定着させようというのです。金額は自由に決められるうえ、売り上げは自分の懐に入ることもあって、経済を学びながら楽しく勉強できることになります。
正直なところ、こちらではそんなに余裕のある生活を送っているわけではありませんので売るものはそんなになかったのですが、せっかくだからと日本から持ってきたお土産類を放出することにしました。
「日本っぽいものを買っておけば、なにかプレゼントにちょうどよかろう」と買っておいた、扇子やおもしろ消しゴム*1、食品サンプル的ストラップ、それから日本独特のお菓子として「蒲焼さん太郎」系のお菓子と、きなこ黒蜜キャンディ、梅干しキャンディを提供することに。2クラスありますので、偏らないよう2分して売ることとしました。
僕は先生と同じブースに座り、「いらっしゃいませ」と声をかけます。実は先週の授業で、バザーのために必要な表現を教えていました。あくまでフレーズなので日本語能力(文法知識)は関係なしに、以下のようなところを紹介しました。
いらっしゃいませ
これはなんですか?
いくらですか?
{ひとつ/ぜんぶで}~円です。
高いですね。
{安く/(ふたつで)~円に/タダに}してください。
まけてください。
またおこしください。
あえてバイト敬語の入らないくらい単純な文章を選んだつもりです。学生たちは、どうにかこうにかこうした文を使って、接客や買い物を楽しんでいたようです。
「お預かり」「お返し」がないのは、今回のバザーがオークションのように入札する形式で、その場で即お金のやり取りをするわけではないためです。札はオープンなので、「いま~ペソまで上がっています」という風に値段を提示することになります。
曲がりなりにも日本から持ってきたものですが、元々ばら撒くために持ってきたお土産ですので安くっても惜しくはありません。値段も、寧ろいろんな人に日本のモノを楽しんでもらうことを念頭に置いて、「蒲焼さん」類*2は1枚5ペソ、飴は1粒2ペソという設定にしました*3。ちなみに、この辺の商品は入札とかやっても仕方ないのでその場で売ります。ストラップとか扇子についても、あってないような値段を設定しました(仕入れ値も高くありませんしね)。
ところが、僕の商品は想像以上に白熱してしまいました。ものによっては設定金額の倍にまで入札が進んだものもありましたし、扇子と飴はすべて完売しました。寿司ストラップはウニとマグロとを用意していましたがなぜかマグロだけ残り、消しゴムはカレーライスを残して完売です。
お金を儲けたという感覚はどうでもよいのですけど、僕のお土産が喜んでもらえたのは嬉しかったですね。梅干しキャンディとかきなこ黒蜜キャンディを多くの学生に試してもらえたのも、日本を伝える活動としてはグッドかと思っています。正直もっと買ってくればよかったと後悔しているところです。消しゴムやストラップはまだ少しとってありますが、どこでどうばら撒くか慎重に考えたいです。
あまり可愛いグッズが多いので、僕も売り上げをはたいていくつか買ってしまいました。
ポケモン*4のステッカーと缶バッジは手作りとのことです。鉛筆はブースまで売り子が来たのに圧倒されるあまり購入。なんとなく「ホシヅル*5」っぽい脱力感が気に入りました。お菓子は最後に余ったのを頂いてしまいました。Chocnut*6もpolvoron*7も大好物の甘味です。
学生たちは「いらっしゃいませ!」「安いですよ!」「かわいいですよ!」「買ってください!」と、教科書では習ってもいない表現をバンバン使って楽しんでいました。つくづく、言葉は使ってナンボだなぁと思いますし、こうした活動を寛大に認めるくらいの余裕が、カリキュラムには必要だと感じました。
*2:実に説明のむつかしい商品でした。「わさびのり」はまだいいんですが、焼き肉とか蒲焼とかいっても中身は魚ですから、「ジャーキーみたいなのだけど、肉じゃなくて魚。味付けはそれぞれ~」と説明しましたが、たぶんあまりピンとこなかったろうと思います。
*3:本当はもっとばら撒き価格にしていたのですが、隣の先生が「それでは安すぎる」と忠告してくださいました。こちらの物価は、いまだよくつかめていないようです。
*4:僕はいわゆる御三家だと断然ゼニガメ派なのですが、他の5匹も魅力的だったので、全種類買ってしまいました。(しかもまとめ買いで割引まで要求してみました)
*5:星新一が描いたツルのキャラなのですが、あまりにひどい画力のため有名になってしまったものです。いまでは星新一のシンボルとして随所に姿を見られるようになっています。今年は生誕90周年らしく、『きまぐれ星からの伝言』というバラエティブックが発売されました。日本に帰り次第読みたい本の1冊です。
*6:チョコとピーナッツというありふれた組み合わせではありますが、極度に甘いのが僕好みです。もろくてつまむことすらままならないのですが、それが口どけの良さをもたらしています。
*7:キャンディのようにくるんでありますが、粉をぐっとよせただけのもの。砂糖とミルクパウダーを混ぜ合わせた、シンプルでおいしいお菓子です。