日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間の活動を経験。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

桑原功次『ハローキティの英語で紹介する日本』

 スーツケースを開けたら予想以上に本が入っていた(入れたのを忘れていた本が多かった)という話はしましたが、その後改めて漁ったところまた1冊発掘されました。しかも出発のかなり直前になって買った本なのに、購入した事実を忘れていたものでした。もちろん買ったからには理由があって、見た目の割に内容が充実しているのです。

 ハローキティが海外でも有名、かつ人気のあるコンテンツであることは今さら声高に言うまでもありません。フィリピンにもキティグッズは浜の真砂ほど売っていますし、ファンとまで言わずともその知名度はかなり高いはずです。

 この本は、そんな人気キャラであるところのキティが、日本の文化を楽しく説明してくれちゃうというコンセプトで作られています。

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 まず手に取って嬉しいのは、全編フルカラーであるということ。参考書みたいに文字情報が重要な媒体はそうとも言えない部分はあります*1が、文化を学ぶ上ではビジュアル(写真ないしは絵)が非常に重要で、例えば料理の写真をモノクロで見せられたってなんだかさっぱりわからないわけです。

 色使いも現物にかなり即していますので、視覚的にうるさいという感じはしませんでした。写真は料理のパートで使われているのみですが、あとの部分についても必要十分なデフォルメが施されたイラストなのでわかりやすいと思います。

 

 全部で175ページなのでそこまで分量はありませんが、けっこう多岐にわたる内容を抑えている印象です。目次はAmazonから確認できるので省きますが、日本人のコミュニケーションの取り方から、歌舞伎や武道などの伝統文化、食事や現代のライフスタイルに至るまで扱われているのが面白いです。お焼香のマナーとか、「浮世絵ができるまで」とか、日本人でも大変勉強になります。

 例えば「能」であれば、舞台装置や仮面、演者の役割まで解説があり、それぞれ漢字の名前、読みのローマ字表記、英訳がつけられています。「コミュニケーション」などの項も同様ですから、外国人が日本を観光する際のガイドブックとして一役買う面も考慮されているのでしょう。

 

 確かに、文化について事細かく説明したいとか、通訳ガイド資格取得を目指すとかいう事情があれば、情報は足りないでしょう。その場合は、例えば松本美江『改訂版 英語で日本紹介ハンドブック』のほうが詳しいですし項目数も上です。ただ既に述べたように、パッと見てわかりやすいということでは中々よくできた本だと思うのです。他から情報を補いつつ、本書のイラストを使って文化紹介をすれば、よりキャッチ―になるのではないでしょうか。

 

 実のところ、この本はフィリピンに置いていくつもりで持ってきました。図書館なんかに置いておき、キティをきっかけとして日本についてもっと知ってもらえたらという思いです。しかし残念なことに、僕が読んでも面白いので、当初の予定は未定にすり替わることとなりました。

ハローキティの英語で紹介する日本

ハローキティの英語で紹介する日本

 
改訂版 英語で日本紹介ハンドブック

改訂版 英語で日本紹介ハンドブック

 

*1:関係ないですが、僕はいわゆる「お勉強」をするときには青インクだけを使います。どうも赤系のインクが目にチカチカして好きじゃないのです。加えて普段書きには万年筆を使っていますので、青のインクが手に入りやすく好みです。