滞在18日目:コバンザメ的マニラ市内観光②
観光も2日目。朝6:30に朝食を頂き、2名の先生方がお帰りになりました。あとお一方はもう1泊なさるということで、少しこぢんまりとはなりましたが小旅行は続きます。
今日行くのはイントラムロスのサンチャゴ要塞(Fort Santiago)。マニラでももっとも有名な史跡のひとつかと思います。3年前来たときは、台風でろくに観光できませんでしたが、雨の中ここには足を運んだ思い出があります。
要塞に行く前に立ち寄ったのは、リサール・モニュメント(Rizal Monument)です。
ここに祀られているホセ・リサール(Jose Rizal)はフィリピンでは英雄と言われる人物で、スペイン統治下にあったフィリピンの独立を目指して奮闘したことで知られています。スペイン軍によって処刑されたのは志半ばの35才のことでしたが、こうした立派な碑を見るに、未だ続く彼の影響力を推し量ることができようというものです。
碑の前には巨大な国旗が掲げられ、広々として気持ちのよい公園なのですが、背後にあるビルヂングが景観を台無しにしていると反感を買っているそうです。発展真っ只中という意味では望ましい動きなのかもしれませんが、それまでの伝統とかとの折り合いが難しいところだと思います。
移動してサンチャゴ要塞へ。入って真っ先に気づいたのは、緑の多かった広場が工事中になっていることでした。ちなみに3年前の風景はこんな感じ。
致命的に劣化したとは考えにくいので、恐らく大規模な改修だと思われます。で、2枚目に写っているような銅像や顔出し(観光地によくあるアレ)はどうなったかというと、広場の片隅に押しやられていました。なんの像かはキャプションがありませんが、ヴァラエティに富んだ表情をしているので面白いです。
たぶん前回来たときはなかったと思われる博物館に入ると、ガイドの方がリサールの生い立ちについて詳しくお話してくださいました。恥ずかしながら、彼について毫も知らなかったのですが、マルチな才能を持つ人物だったようです。医者としての知識を持ち、留学先で人びとを助ける傍ら、新種のカエルやトカゲを発見したり、小説を著したりもしたとか。さらに驚くべきは語学力で、タガログ語やスペイン語に加えて、程度はどうあれ日本語も話すことができたというのだから、やはり天才だったのでしょう。
日本語を話せた、というのは各国を留学する過程で日本にも立ち寄っていたためですが、彼の遺した墨絵を見ると漢字まで書けたようですから驚嘆に値します(その前に香港にも訪れていた影響はもちろんあるでしょうが)。
彼は世界中にガールフレンドを持っていたようで、日本にも「お勢」という方がいたそうです。この方、本名は「臼井勢以子」というそうで、なんと英語もフランス語も話せた才女。偶然通りかかったお勢に一目ぼれをしたリサールは、フィリピンでの任務さえなければ彼女と日本に残ったのではないかという声もあります。
(参考:http://ourhappyschool.com/history/seiko-usui-jose-rizals-japanese-girlfriend-0)
博物館の後は韓国料理屋さんでお昼。なにがなんだかよくわからず、韓国の先生にに「どれがいいでしょうか」と相談した結果、無難に「Dubu Chige」*1を頂くことに。
思ったよりも辛かったですが、おいしいですね。韓国料理って日本でもそこそこ人気ありますけど、よく考えたらちゃんと店に入って食べたことはないような気がします。
最後に向かったのはSM North。先週末に行ったショッピングセンターです。「先生のお買い物かな」と暢気に構えていると、ここにあるホールで開かれている「Pinoy K-pop Star 2016」というイベントに案内されてしまいました。
趣旨としては、どうやらアマチュアの大会みたいなもので、これに通ると韓国の本戦に進める、という感じみたいです。すでに映像審査でかなり絞られていますので、レベルとしてはけっこう高い印象。
ホールいっぱいに埋まった観客は大盛り上がりで、いちいちパフォーマーが出るたびに歓声が上がります。「そんなに有名な人ばかりなのだろうか」と思っていましたら、どうやら彼らの使う音楽自体に興奮しているだけとのこと。それにしたってほとんどすべての曲を観客が一緒になって歌う(あるいは踊る)という空間の圧力はすさまじいものがありました。
韓国語は全然わからないし、K-popはおろかJ-popすらわからない、ましてライブで音楽を聞いたこともない僕でしたが、かなりexcitedしてしまいました。まずは日本の曲からちまちま聞き始めようかなと思った次第です。
ところで、このイベントはかなり並ばないと入れない代物でしたが、僕らは「VIP」というシールを胸に入って裏口から入れていただき、さらに一番前の席に陣取って鑑賞していました。申し訳なさを感じるとともに、これだけの機会を設けていただいたことに、大変な感謝を抱かざるを得ません。なぜって僕は今回の学会には、まともに参加してすらいないのですから……。
とはいえフィリピンの歴史、フィリピンにおける韓国文化の享受と、一度に多文化に触れられた1日でした。研究室ですら多言語に満ち満ちているのですから、こうした刺激的な日々が続けば、僕としても非常に楽しい滞在になると思います。