日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間の活動を経験。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

研修18日目:巻いて、着て、読んで

 TTが一段落して、ここからいよいよ研修も終盤となりますが、集大成として用意されているのは「日本事情・日本文化紹介」です。グループごとにテーマを決めて、最終週の火曜日にみんなの前で発表するのですが、準備時間が長くとられています。今日は流れが説明されたので準備にはならないにしても、明日も月曜日も午後はまるまる発表準備の枠になっています。

 今日のイベントはそれだけではなくて、浴衣の着方の授業があったり、課外にはビブリオバトルがあったりと、実に幅広い活動をすることができました。

 

 

①英語

 昨日の「日本文化解説」の続きをやるものと思っていたら、それは明日やるのだそうです。今日のテーマは「location」「cooking lesson」「movie discussion」でした。locationについては、要するに場所を聞くだけですから難なく済みましたが、料理のくだりでは実際に日本料理の作り方を英語で説明してみる、という練習をしました。昨日に引き続き予習などしていませんので、なかなか難儀です。

 僕は前につくった「かっぱ巻き」について説明しました。「かっぱ」が"water imp"であることは、今は亡き桜塚やっくんのネタで覚えたように記憶していますが、"water monster"のほうが通りはよいのかも。細かいコツなんかはあえて説明せず、載せて巻いて切るという工程を追っただけでしたが、それでもけっこう英語が出てこないものです。ただ、我ながらちゃんと作り方を覚えているものだなあと感心しました。

 他の方は「おにぎり」「目玉焼き(sunny side up)」「豚汁」「鳥団子キムチ鍋(!)」をそれぞれ解説していましたが、苦労しながらもどうにか伝わるものだなという印象です。料理の用語をいくつか入れておけば、あとは食材次第という感じです。長ネギって説明しにくいのですが、leekと言ってしまうのが一番近いようです。聞くところによればleekは生だと食えたものではないらしいですが、厳密に学名なんかで説明するよりよっぽどイメージしやすいでしょう。

 

②日本文化紹介Ⅰ

 来週の火曜日に、いわば最終プロジェクトみたいな形で文化発表をします。派遣先地域の近い3-4人でグループを作り、手ごろなテーマでポスターを作り、10-15分くらいの発表をします。

 制約がいくつかあり、特に大きなものは「体験を見据えること」です。文化をただ一方的に紹介するだけでは面白くないですし、第一中学生なら集中が続くはずありません。料理なら実際に作ったり、書道なら書いたり、歌なら歌ったりと、学習者に体験させることを通じて日本文化に親しみを持ってもらおうというわけです。で、今回の発表での観衆はわれわれ日本人ですから、ひとまず体験に至るまでの説明を実際にやってみる、というのが課題となっています。

 とはいえ現地で堅強な設備が整っている保証はありませんから、できるだけ何もなしに出来るものを画策しています。明日までにテーマを決めて、月曜日を使って完成させます。

 

③浴衣体験

 日本人、あるいは日本文化の伝道師たるからには、浴衣のひとつくらい着られなければと思いながら、結局機会のないまま23年を生きてきました。着たこと自体は多分あると思うのですが、きっと正確なやり方ではなかったのでしょう。ちなみに剣道着は袴ですので、後ろ手に蝶結びができるようになるという特典はありますが、エプロンを着られる以外に応用はききません。

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こんなのを着ました。

 前方でパワポを使った説明がなされていましたが、着る側は必死でうまく聞くことができず、着付けの心得がある方に助けていただいてどうにか形になりました。3度ばかり挑戦して、基本的な帯の巻き方は覚えられたと思います。行くまでに絶対安いのを買って、きちんと練習しておきたいです。日本人で浴衣も着られないとなると、ちょっとはくがつかないですね。

 

ビブリオバトル

 研修の序盤で図書館を案内していただいたときに、ビブリオバトラーが募集されました。あとからメンバーに「chihariroは本が好きなのだから出たらよかったのに」といわれましたが、僕が好きなのは物体としての本ですので、「聴衆に読みたいと思わせる」ことを目標とするこのバトルは、完全に管轄外です。僕自体、とりたてて本読みというわけではありませんし。

 で、今日は4人の方が前に出ましたが、それぞれに大変面白かったです。僕の読んだことのない本ばかりで、それをいかにも楽しそうに説明なさるので、結果としては全部読みたくなりました。

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思いやりのこもった本、ですか。僕ならなにをおすすめするだろうかなぁ。

 誰も興味ないと思いますが、僕の好きな小説(含短篇なので、一冊の本とは限らない*1)を10作あげてみます。

志賀直哉「焚火」

武者小路実篤『お目出たき人』

村上春樹風の歌を聴け

夏目漱石坊っちゃん

太宰治「女生徒」

北村薫『空飛ぶ馬』

海野十三「俘囚」

森見登美彦『有頂天家族』

西村賢太「焼却炉行き赤ん坊」

・J・ウェブスター『あしながおじさん

 次点はルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』で、最近西村賢太を読むまではランキングに入っていましたが、惜しくも選外にもれてしまいました。

 で、バトルの話ですが、自分が好きであっても、それを共有するということを考えたら、ネタとしてキャッチ―なものを選ばなくてはなりません。ここにあげた10作の中で一般受けして、なおかつ「おっ」と思わせる情報を入れるとすれば、北村薫を選びます。なぜなら『空飛ぶ馬』は彼のデビウ作で、デビウ当時彼は覆面作家だったのです。編集に携わったミステリ界の巨匠鮎川哲也でさえ、その名前から女性だろうという推理をしているくらい謎の多い人物でした。話自体は女子大生を主人公とした「日常の謎」と呼ばれる内容で読みやすく、本にまつわる蘊蓄満載の実に楽しい小説です。さらにポイント(自慢)を付け加えるとしたら、僕の所蔵する『空飛ぶ馬』は、初版帯付きで署名入りなのです。これだけ材料がそろって、ようやくプレゼンの形になるかどうかというラインかと思います。いずれにしても、僕は人に勧められるほど読書経験が十分ではありませんので、出場することはこれからもないと思います。

*1:どうでもいいですけど、僕は原則として一冊の本は『』で、一冊の中の短篇は「」で示しています。論文を書くときのスタンダードとばかり思っていましたが、案外統制されていない印象も受けます。