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日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間派遣予定。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

研修15日目:そして実践へ

派遣前研修の話

 全日程の半分が終了して、後半戦に突入です。前半はどちらかというと土台を形成するような科目が中心で、アイデアや知識を吸収するフェイズでしたが、今週からはより実践的な内容に入っていきます。ぶっちゃけて言いますと、日本語パートナーズでより重要なのは専門的な知識ではなくて、どのように活動するか(=実践)だと思います。というのも、パートナーズの派遣は専門家(日本語教師)としてではなくて、あくまで「パートナーズ」ですから、クラスをいかに活気づけることができるかが重点的に問われるのです。うーん、僕にはどちらも備わっていないような気もしなくはないですが、明るく元気に頑張れたらと思います。

 今日を含めて3日間にわたり「TT体験」というコマがあります。これは現地でやることになるTT(Team Teachinng)を練習してみようという、いわば授業のデモンストレーションです。派遣国ごとにいくつかのグループに分かれて行われますが、これくらいの人数(フィリピンは各5-6人)に慣れておかないと、現地ではあがりきって何もできなくなってしまいます。

 

①英語

 ミニテストはまずまずの結果でした。今回はお得意の形式によるペーパーテストで満点を狙っていただけに、瑕があったのは少々残念です。いっしょに提出した日記は、変わらず"Well written!"というご評価を頂けたのでうれしかったです。

 今日はフィードバックをしたあとで、運動についての話をしました。「exerciseはするか」と聞かれて、「家の周りを歩き回るくらいで、運動は基本的に嫌い」と応えましたが、そのあとでスポーツ経験をも聞かれました。僕は剣道二段を持っていますが、剣道をスポーツと呼んでいいものか、いつも悩んでしまいます*1。いちおう先生にそう応えたところ、「剣道のlevel(段)はいくつまであるの?」との質問をされました。僕の記憶では段位手帳(そういうのがあるんですよ)に十段まで欄がありましたが、実際にそれを持っている人はいないと思います*2。というのも、段を取得するには昇段試験を受ける必要があるのですが、次の段を受けるには年数を開けなくてはならないのです。それも以下のように、段数を経るごとに修行すべき年数が増えていきます。

初段:一級受有者

二段:初段受有後3か月

三段:二段受有後1年

四段:三段受有後2年

五段:四段受有後3年

(参考:称号と段級位のルール|剣道を知る|全日本剣道連盟

 初段をとれるのが確か中学2年くらいですから14才として、最短で受かっていけば20代前半で五段もとれるのでしょうが、あまり聞かないです。剣道の昇段審査は、二段くらいまではほぼ全員受かりますが、三段からはかなり真面目にやっていないと受からないものです。前にも少し書きましたが、僕が習っていた道場の大先生は七段で、その下の先生方は四段か五段くらいでした。まあ実は段位もあまり関係なくて、「この人には絶対勝てない」と思うほど強い先生がいましたが、その先生は初段までしか持っていませんでした。なんだかブラック・ジャックのようでかっこいいです。

 ともあれこういう細かい情報も、剣道経験者としては改めて調べておかなくてはなりませんね。そういえばロンドンで自分が剣道をやっていたことを伝えたら、「beltの色は何色?」と聞かれて困りました。むろん剣道は帯なんて使いませんが、それをうまく説明できなかったのが悔しかったです。

 

②TT体験Ⅰ

 午後一は、お待ちかねというか本丸のひとつ、TT体験です。3日あるうちの初日ということで、イントロ的な内容でしたが、実際に今日は3人がデモティーチングをしてみました。

 試しにと与えられたテーマは「時間」でした。「~時」という言い方はただ数字に「じ」をくっつければできるような気がしますが、実はそうでもなく、「よんじ」「ななじ*3」「きゅうじ」は数字の部分だけを見るとあっていますが、時間の言い方としては誤りと見なされます。そのあたりの誤用訂正を明示的にやるか暗示的にやるか、またどれだけの復唱をどのような方法でやるか、考えると深みにはまりそうです。

 指名を受けて、僕も実際に挑戦してみました。発想の豊かなほうでは決してないのでアイデアという意味では貧相でしたが、キュー(合図)とか褒め言葉は割にうまくできたかと思います。やってみて気づいた一番大きな問題は、英語がまったく出てこないことです。僕が初めて習った日本語教育の方法は「直接法」と呼ばれるものでした。これは、学習者がより多く日本語と接することができるように、説明からなにからすべて日本語で話すという方法です。この方法を使うとどうしても伝わりにくくなりますので、絵カードやジェスチャー、「やさしい日本語」などを駆使する必要が出てきます。で、僕はそれを練習していたものですから、日本語を説明するあるいは練習させようとする場面において、なかなか英語にスウィッチすることができませんでした。もちろん直接法の練習も一側面として非常に大切なのですが、現地では言うまでもなく間接法が主流でありますので、英語をうまく組み込む練習もしなくてはなりません。

 急に前に出たもので口がカラカラになるほど緊張しましたが、やはり楽しかったです。多少むりにテンションを上げているからそう錯覚するのかもしれませんが、やっぱり自分は教育に興味があるのだなと自覚した次第です。

 

③東南アジアと日本の関係史

 打って変わってカッチリとした講義。東南アジア研究所で地域研究をされている先生が講義をしてくださいました。僕は歴史とか地理とか、ようは社会科が全般的に苦手なので、ちょっと苦しい時間となりました。

 「人口ボーナス」という言葉は寡聞にして知りませんでした。簡単に言うと、人口全体に対して労働人口が多い状態のことをさすタームらしいです。労働する層が厚く、それに比して子供や老人が少なければ、潤沢な利益を福士に回すことができ、国家の発展をのぞむことができるのです。日本の高度経済成長もこれに支えられていたわけですね。で、フィリピンはいまその人口ボーナスの真っ最中で、しかも2049年まで持続すると考えられています。これはつまり、21世紀半ばまでフィリピンが発展し続けるチャンスがあるということです。もっと言えば、フィリピン人の多くは英語を話すことができますから、海外の資本を得る機会も得やすいことになります。そう聞くと、ここ数年の日本はひどく停滞しているのではないかと思ってしまいます。

 歴史的な部分は勉強不足がたたってあまり身になりませんでしたので、研修が終わってから復習しておきたいと思います。何かよい書籍はあったかなぁ。

 

 夜、先生と食堂でご一緒したのですが、その時に面白い漫画家を紹介していただきました。「ドリヤス工場」という方で、素性は存じ上げませんが、水木しげるのタッチを真似て日本の近代文学を描いています。水木サンは、とくに後期はアシスタントに任せっぱなしで、今知られている水木タッチのほとんどはその弟子のタッチと同義ともいえるかと思いますので、パクリとかそういうことを声高に言うのは適当ではないでしょう。ドリヤス工場さんはWeb漫画のサイトに投稿していて、ちょっと読みましたけどかなりよく名作をまとめていらっしゃいます。「定番すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む」という煽りもキャッチ―です。

 一応、リンクを載せておきますので興味ありましたらご覧ください。

to-ti.in

僕はこの漫画家の回し物でも何でもありませんけど、公費で学んでいるからには知ったことをできるだけ共有しようという、愚直なまでに真摯な態度とご理解ください。でも、こういういろんな情報が載っていたほうが、ブログとしてはおもしろいと思うのです。

*1:前にUPでその話をしたら「剣道はスポーツじゃなくてmarcial art(武道)だけどね」とやんわりたしなめられたことがあります。まあ現代ではほぼ全員がスポーツとしてやっているわけだから、そう呼んでも問題ないかと思いますが。

*2:調べたら九段と十段はすでに廃止されているようです。

*3:関西圏の方はこういうそうですね。「いちじ」との区別を明確にするという意味では、こちらのほうが理にかなっています。