日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間の活動を経験。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

研修3日目:できないこと、知らないこと

 相変わらずうまく眠れない日々が続きます*1が、今日から本格的に外国語の授業がスタートしました。クラス分けは昨日のうちに張り出されていて、基準はよくわかりませんが、ベトナム語に関しては派遣先が南部か北部かで分かれているとのことです。南北で発音が違う故らしいですが、そうでなくても「6声」を習得せんとする意欲には頭が下がります。

 

 

①外国語

 フィリピン派遣のメンバーは5-6人ずつの2クラスに分かれ、先日面接をなさったフィリピン人の先生がそれぞれ教えてくださいます。やはりこれくらいの少人数でないと、先生の管理からいっても生徒側の負担からいっても、うまく授業が回らないように思います。

 で、僕らのクラスを担当する先生は、お話し好きで元気な女性の方。世界各地で勉強した経験があり、日本に住んでけっこう経つとのこと。

 あらためて先生が自己紹介した後に、クラスの5人が順番に自己紹介をします。僕の番は、ちょっと短すぎました。もっとあれもこれも言えばよかったのですが、うまく頭が回らなかったのと緊張とであまり多くに言及することができず、無念です。全員が終わったら、今度は先生がそれぞれを指名して、他のメンバーの自己紹介について質問するように求めました。どうにも僕は、こういう場面で他の方の話を引き出すのが苦手でして(その方に興味がないわけでは決してないのですが)、うまい質問が浮かばないのです。どうにか克服しないと。

 その後は授業の進め方、勉強の仕方、それから日本語のクラスで必要となるであろう表現を確認したりと、初日なので軽めに終わりました。とはいえ会話は余すところなく英語でなされましたから、それなりの集中でくたくたです。むかーしハワイ大学で1ヶ月講義を受けたときも、初週は特にこうだったことを思いだしました。この環境に慣れていけば、多少気を抜いていても聞き取れるようになるはずです*2

 

②外国語としての日本語

 日本語教育における基本的な用語・観点はいくつもありますが、それの導入となるような講義でした。たとえば日本語動詞の活用における3グループ。僕は"Regular Ⅰ" "Regular Ⅱ" "Irregular"と習いましたが、ここでは「グループ1~3」と呼ぶようです。ほかにも「うVerb」「るVerb」なんて言い方があったりしますけど、どのみち分け方は以下の通りです。

1.五段活用動詞。「ない」の前がア段音になるもの。e.g. 買う

2.上一・下一段活用。「ない」の前はイ段音・エ段音。e.g. 着る、食べる

3.カ変・サ変。=「来る」「する」「~する」のみ。

上一段とか言うとむつかしくてわかりにくいですが、こうして活用の種類ごとに分けると理解も早いわけです。日本人向けの話をすると、この「『ない』の前がア段音かイ・エ段音か」という識別は、「ら抜き言葉」の防止に役立ちます。この分類でいうと、グループ1は「れる」だけで済み、グループ2は「れる」をつけることになるわけです。ふだんはそこまで気にしなくていいかもしれませんが、日本語学習者の前で、先生やアシスタントが「ら抜き言葉」を使っているとややこしいことになりますね。

 ほかにも「こそあど」とか「い形容詞・な形容詞」など、いろいろな問題についてみんなで考えたのですが、つくづく感じたのは、日本語を研究するのと教授するのとではアプローチの仕方が全く異なるということです。僕はいままで、どちらかというと研究の方をメインでやってきましたので、意味論的な分析とか専門用語とかはある程度わかるつもりなのですが、必ずしもそれらは日本語教育の場では活かされないと思います。つまり「厳密に分析するとこういう違いがある」というよりも、より表面的な説明に収束させてしまったほうが、学習者には伝わりやすいことがあるのです。

 卑近な例を挙げますと、たとえば「とても」と「すごく」の違い。その昔ちょっと分析をしたことがあるのですが、モダリティの問題なんかを説明するのではなく、ひとまずは単純に「とてもが丁寧で、すごくはよりフランク」という程度でよいと思います

。決して妥協しているわけではなくて、その場その場で必要な言い方・考え方があるということです。

 いわゆる養成講座ではなく、大学での講義をとおして日本語教育を考えてきた僕は、実践の場というか実際に教えるうえでの問題点について、そこまで深く考えてこなかったのだなぁと痛感した講義でした。

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 写真は授業内で「動詞の木」として提示されたもの。学習者に対して、全体のカリキュラムと現在の位置を知らせるには、視覚的でわかりやすい資料だと思いました。

 

 ところで昨日の予防接種の跡ですが、やっぱりまだ痛みますね。特に筋肉注射の1発はことさら尾を引いている感じがします。けれども見た目に一番はっきり残っているのは、痛みをこらえるために抓った傷跡でした。

*1:1時前に寝て、目が覚めたらまだ3時半。無理やり寝付いても4時に再度目が覚めてしまいました。どうにか7時までは頑張って寝ましたけど。ストレス? 疲労?

*2:というか、ハワイの経験でかなり慣れは獲得したはずなのに、すっかり鈍り切っていることが情けなく思います。