日本語パートナーズ記@マニラ

日本語パートナーズ フィリピン3期として9カ月間の活動を経験。大学では国語学を専門にやっていましたが、キャリア的には背水の陣。

研修1日目:アイスブレイク

 さて、いよいよ大阪での研修が始まりました。本日はオリエンテーションなど、今後4週間をいかにして過ごしていくかが説明されました。

 研修の話を延々と書いたところで、参考になるところは少ないでしょうが、特に大事だと感じた部分だけピックアップして記載しておきます。

 

 

①顔合わせ

 昨日到着して、偶然居合わせた方とは挨拶を交わしましたが、全体としてはまだまだです。何せ、いまパートナーズとして研修を受けている人は全部で38名(!)。一朝一夕にみなさんの名前を覚える、というわけにはゆかないのです*1

 で、今日の午前中は施設のスタッフさんが他の紹介ののち、自己紹介をしました。けれども時間的制約と、やはり一遍に言うのは無駄という判断もあってか、名前と派遣先、出身地を述べるにとどまりました。

 

基金事業概要

 次にパートナーズのおおもととなっている、国際交流基金がどのような活動をしているか、どのような意味づけて事業を行っているかという話がありました。

 ざっくり言いますと、パートナーズのような日本語教育支援のほかにも文化芸術交流や知的交流(研究)などに尽力している機関という説明でした。

 似たような機関では、青年海外協力隊をやっているJICAが多分一番有名ですが、こちらは知名度が上がっていないと担当者の方は嘆いていました。パートナーズのCMも、Youtubeとかではながれているんでしたっけ。僕は残念なことにリアルで見たことはないです。

 

 こうした支援を続ける上では、「4C」ともいうべき考えが重要とのことでした。

Communicate = 交流

Connect & Share = 共有

Collaborate = 協働

Create = 創造

 単純といえば単純ですし、よく言われていることなのかもしれませんが、やはり根幹としてこのような考えを常に覚えておくことは大事だと思います。

 それの一番わかりやすい例が、日本語パートナーズがあくまで「アシスタント」を派遣するものあって「自分ひとりで教える人」を送るわけではない、その理由です。仮に自分で教えられる人=日本語のプロフェッショナルを派遣すると、現地で日本語を教えて、終わったら何も残さずに帰ってくることになってしまうことが懸念されるのです。こうなってしまうと、上記でいうところのCollaborateとCreateに欠け、意味の薄い派遣になってしまうことになるでしょう。

 反対に、アシスタントとして派遣すれば、現地の先生を補佐するかたちになるわけですから、そこにCollaborateが生まれます。そうして携わっていく中で、現地の先生は日本語ネイティブから何かを学び取ることもあるでしょう。つまるところ、(ややおこがましい言い方をすれば)現地の日本語教師を育てる意味合いで、我々は各国へ派遣される側面があるということです。

 

③パートナーズとしての心構え

 パートナーズは「公用旅券」によって派遣されます。国会議員とかが公務で海外出張するときに使う、特殊なパスポートです。これはパートナーズの事業が国税によって支えられていることの象徴ともいえますが、それだけに我々は真摯で責任ある態度をとらなくてはなりません。

 悪い例というか、注意される可能性のある事例として、たとえばゴルフやサーフィンに興じることが挙げられました。「サッカーや野球では言われないのですが」と担当者の方がおっしゃっていたように、この2つは特に「あいつら公務なのに遊んでら」と思われやすい印象はあります。

 僕の意見としては、休日の観光にしろスポーツにしろ、どのように意味づけすることができるか、という点が非常に重要なのです。別にゴルフは犯罪ではありませんし、サーフィンをやる人間が悪人というのでもありません。それらについて、自分が「現地の文化として体験しました」とか「現地の友人との交流としてこのような活動をしました」とか、パートナーズとしての文脈において堂々と公表すれば、周りか悪評を得ることもないのではないでしょうか。

 実際どうかはわかりませんけどね。

 

 

 ここから午後のプログラムです。

④アイスブレイク

 語義としては、緊張を解きほぐす、というような感じです。簡単なレクリエーションを通じて、参加者同士の親睦が深められました。

 みんなで輪になったり、グループに分かれたり、何のことはないゲームなのですが、楽しかったです。先生曰く「こうしたネタを10くらい用意しておくと、急に現地で振られたときに助かる」とのこと。確かにそうでしょう。弾数は多いにこしたことはありません。(しかも楽しければ言うことはないでしょう)

 

⑤図書館紹介

 蔵書自体は5万冊と、そこまで多いわけではありませんが、非常に充実しています。日本語教育に関する本はもちろん、各国事情に関する本、やさしい日本語で書かれた書籍、各国語に翻訳された日本文学などなど。村上春樹については30ヵ国語超分の書籍を所収しているとのことです。

 個人的にものすごく驚いたのは、手塚治虫『オヤヂの宝島』がさりげなく置いてあったことです。

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漫画大全集DVD-ROM版の別冊付録のようなかたちで出された本ですから、非売品です。詳しい人には、ハムエッグのデビュー作*2といえばその古さがお分かりいただけると思います。

 手塚のこんなに古い資料があるくらいに、架蔵が充実しているのはまことに感激でした。時間の許す限り、有効に使っていきたいと思います。

 

 今日の一日はこんな感じでした。

 食事の際にも他の方とお話ができるようになり、前途の見えぬ状況はなんとか脱したようです。

 明日から、いよいよ本番です。

 

(次へ→研修2日目:針の筵とならんや

*1:そもそもの話ですが、僕は人の顔と名前を覚えるのが非常に苦手なのです。人の信用を得るうえでは一番といっていいくらい大切なことなのですけれどもね。

*2:これを見るまで、僕は『地底国の怪人』がデビューだと思っていました。